ぺきん。
「あ」
フランクは真っ二つになったそれを見た。どう見ても真っ二つだった。見事なまでに真っ二つだった。
ひょい。
壊れてしまった以上は仕方ないのでフランクはそれを投げ捨てた。うまい具合に床に開いた穴に落ちる。めきゃ、とか、ばきゃ、とか小気味いい音が聞こえた。
「ま、いいか」
「良いわけあるか」
後ろからの声にフランクは振向いた。そして、驚愕に目を見開く。
「やや、ママン」
「誰がママンだ。私は由緒正しきマジカル☆クリオネにして魔法大臣のネクタールだ」
「説明口調ありがとう、ママン」
「誰がママンだ。私は由緒正しき――あれ?」
「それで、いかなる用件だってのさ。場合によっては出るとこ出るよ。耳とか?」
「元から出ているだろうが。まあ、それはそれとして、あれは女王様のものであるからして、紛失するのはいくらお主だとしてもまずいぞ」
「なんてこったいそいつはたいへんだそれじゃあ急いで人間界に遊びにいかないとね」
「遊びを目的にするな」
「大丈夫だよ。探してくれる人は探すから。例えばアリサとか」
「あまり魔法少女に迷惑はかけるんじゃないぞ。ただでさえ昨今のパートナーへの不信状況には頭が痛いというのに……」
「余計なことを気にしたら色々と困ったことになるよ。伏線か〜とか」
「そんなもの知るか。それよりも描写が無いことに先ほどから不信感を抱いているのだが」
「そいつァ、もっと触れちゃあいけない領域だよママン」
「誰がママンだ。私は由緒正しき――」
フランクはひょい、と床に開いた穴に飛び込んだ。そこが人間界への入り口だからだ。
人間界はいつものように混沌としていた。様々な感情、様々な力、様々な命――
「いでよ、マイ・パートナー」
フランクの体から、いくつかの分身が散る。この分身によってアリサを発見しようと――
「あれ、フランク? どうしたの?」
「あれ?」
フランクは分身の消えた先とアリサを見比べた。そして、「うん」と一つ肯くと両手を広げる。
「さぁ、宝捜しだ!」
「は?」
「つまり――」
フランクは語りだした。――作り話を。
「と、いうわけさ」
「つまり、その宝物のかけらを集めろと?」
アリサが結論を小さく頭を傾げながら訊くと、フランクはうねうねと耳を動かしながら答えた。
「そうそう。七つくらい集めてハッピーにならないかい?」
「七つもあるってこと?」
「さぁ? 5つくらいで良いんじゃない?」
「質問してるのはこっち」
アリサは、むんず、とフランクの耳を鷲掴みにして持ち上げた。
「ごもっとも。まあ、そんなことを気にしていたら話が進まないと苦情が来るのさ」
「どこから?」
アリサが睨んできたが、フランクは気にもせずに天を指差しあっさり話をすり替えた。
「伝説の勇者は二人のお供を連れていざ旅立たん!」
「……お供って、誰よ?」
そのとき、分身が帰ってきたのをフランクは感じた。分身の記憶から、手駒が増えたことを知る。
「目撃者はどう処理すべきだろう?」
またもや話が変わったが、アリサは律儀に悩んでから答えた。
「ん〜……海に沈めるとかがセオリー?」
フランクは良い子の味方たるマジカル☆ワールドの住人っぽく、もっと穏便な案を出してみた。なんとなく。
「教育に悪そうなのは悪いから今日のところはこうしよう」
「こう?」
フランクはペチリ、と指を鳴らした。
「まきこむ」
その場にいた者すべての目に映る景色が歪む――
ザ・ザン!
強制転移させられた手駒たちは、混乱を表に出すこともなく、言った。
「「宝について聞かせてもらおうか」」
そして物語は紡がれる――