「と、いうわけさ」
ある日、突然現れたフランクが話した内容は若干の混乱を引き起こすものだった。
「つまり、その宝物のかけらを集めろと?」
アリサが結論を小さく頭を傾げながら訊くと、フランクはうねうねと耳を動かしながら答えた。
「そうそう。七つくらい集めてハッピーにならないかい?」
「七つもあるってこと?」
「さぁ? 5つくらいで良いんじゃない?」
「質問してるのはこっち」
アリサは、むんず、とフランクの耳を鷲掴みにして持ち上げた。耳の動きがなんとなく不愉快だったからだ。
「ごもっとも。まあ、そんなことを気にしていたら話が進まないと苦情が来るのさ」
「どこから?」
アリサが睨んだが、フランクは気にする素振りも見せずに天を指差しあっさり話をすり替えた。
「伝説の勇者は二人のお供を連れていざ旅立たん!」
「……お供って、誰よ?」
あっさり話をすり替えられたアリサは、周囲を見回してからフランクに文句をつけた。そのアリサに、何を考えているのかわからない虚ろな目を向けて、フランクがポツリと言った。
「目撃者はどう処理すべきだろう?」
またもや話が変わったが、アリサは律儀に悩んでから答えた。
「ん〜……海に沈めるとかがセオリー?」
アリサは、最近読んだ『絶体絶命探偵ポトフ:絶体絶命事件簿パート3 〜断崖絶壁で絶体絶命』――サリーに借りたものだった――を思い出したので、そのとおりに言ってみた。
「教育に悪そうなのは悪いから今日のところはこうしよう」
意表をついてまともなことを言うフランクに、内心ショックを受けながらアリサは訊いた。
「こう?」
フランクはペチリ、と指を鳴らした。
「まきこむ」
その場にいた者すべての目に映る景色が歪む――
ザ・ザン!
突然の音に、左右を見ると見知らぬ男が二人、跪くような姿勢でいた。黒髪の男と毛布のようなものを着込んだ男。
「「宝について聞かせてもらおうか」」
混乱するアリサをさておいて、その言葉がステレオで響いた。
そして物語は紡がれる――