アニキは失意の中にいた。海の男の誇り――お宝――を手に入れることができなった。テリーになんと言えばいい? 俺はあいつが誇りに思える『アニキ』なのか?
だが、アニキは頭を振って思い直した。そうだ、俺のやったことは十分に誇れるものだったはずだ。それは海の男の誇りを取り戻したと言っても過言じゃない筈だ。
「誇りは物じゃねぇ! 心だ!」
突然叫ぶアニキの様子に、周囲の人々が奇異の視線を向けるが、もちろんアニキはそんなことを気にしなかった。
工事現場に戻ると、作業員の中に弟分の姿を見つけた。迷わず、呼ぶ。
「テリー!」
「アニキ!」
テリーがアニキに気付き、満面の笑みで駆け寄って来る。そして、誇らしげに石畳を指し示した。
「どうっスか! もうすぐ完成っス!」
アニキはテリーの肩をポンと叩くと――
「んぶぅぅぁあっかやろぉぉうぃ!!」
殴った。
「ぶふぁー!!」
吹っ飛ぶテリー。アニキはテリーに駆け寄ると胸倉を掴んで引き起こした。
「海の男の誇りはどうした! いまのお前は、陸の男じゃねぇか!」
「……あ、アニキ、お、オイラ、オイラ間違ってたっス!」
アニキは手を差し出しながら言った。
「大丈夫だ、間違いは正すことができる! 行くぞ、テリー! 海の男の誇り、そう、お宝を求めてッ!」
「あ、アニキ……」
テリーはがっしりとアニキの手を握り返して頷いた。
「おうっス! 行くっス! 誇りを取り戻すために!」
――彼らの宝捜しは、まだまだ続く。
END