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グレイルクエスト 暗黒城の魔術師より 2004.11*シャープペンシル |
この絵の題材「グレイルクエスト」を最初に触れたのは小学校時代、兄の本棚からこっそり盗み読んだ時のことで、それ以降このゲームブック(そう、児童文学や漫画ではないのだ)の記憶は流れない澱となって自分の奥底で息づき続けていました。
そういう原体験の例に漏れず、時代の流れが本屋からゲームブックというジャンルを駆逐して、十年ほど、本を読み返す機会もないまま(兄はこのシリーズをごっそり持ったまま上京してしまった、ごうつくばりめ)自分は大人になったわけですが……。 ネットの力というものを一番実感したのはこの時ですね。復刊ドットコムでグレイルクエストシリーズ(何巻もあるんだぞ!)復刊が決定し、2004年11月にとうとう創土社版「暗黒城の魔術師」が発売されたのです。 で、買って、遊んで、クリアして、記念に描いたのが上の一枚でした(長い前置きだ)。 ピップだけは挿絵になったことが無いのですよね。きっと無数のヴィジュアルが存在することでしょう。 ここで簡単に、本の紹介をしましょうか(詳細な紹介については下のリンクをたどれ)。物語の舞台は中世イギリス、騎士王アーサーの治めるアバロン王国が主な舞台となります(ならない時もあるが、スタート地点はいつもその辺だ)。プレイヤー(読者のことだ)はピップという主に農場でニワトリの世話にいそしんでいる若者となって、サイコロを手にいろいろとひどい目に――おっと、いろいろな冒険に出る、そんなゲームブックなのです。 「ゲームブックってなんなんだ」と根本的な疑問を抱いている方々は、こんなリンクで細かいページがつながっているヴィジュアルを思い浮かべてみましょう。そんな感じですよ(そんな感じでいいのか)。 以上の説明だけではなんだかちょっと凡庸な代物に聞こえるのですが……。 このグレイルクエストは、とにかく異様なのです。
尋常ではありません。作品世界を包む霧のような陰鬱さ、それでいてオブラートのように軽妙なユーモア(たぶんギャグではない)、まともな発想では出ない小ネタ、夢に出そうな挿絵、迂闊に真似をしたら呪われそうな挿絵、誰かが「怖い」と言って逃げ出したという(実話)鉛筆一本で描かれる挿絵、それら全てがこの本を彩りません。全てはグレースケールとして内包されて、手に取る冊子を「魔法の本」にしているのです。小学生が読めば、間違いなく将来に影響が及ぼされるでしょう(例えば14という数字に奇妙な反応を示すようになるのだ)。 ということで、ここまで紹介はしましたが、あんまり堂々とおすすめはしません(笑)ゲーマーよりは、海外ファンタジィ文学に興味がある方が手に取るとハズレは比較的少ないかな、と思います。 最後に、ひとつ裏話をお教えしましょう。 「シリアの冒険」のニワトリは暗黒城から失敬してきました。 |
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