……Go home》
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ウェッソン:……雨だな。 テムズ:あらら、結構ひどいわね。こんなのじゃ、誰も来ないか……ウェッソン、もう上がっていいわよ。私一人で大丈夫だから。 ウェッソン:「大丈夫」か。あいつもそんなことを言っていたな。 テムズ:はい? ウェッソン:あいつの物語はいつもその言葉から始まったものだ。そして、最後の最後に締めくくった結びの形も、それと酷く似ていた。しかし…… テムズ:なんですって? ウェッソン:そう、こんな雨の日はいつも思い出す。あの日のことを。そして、俺のただ一つの過ちを―― テムズ:ウェッソン……。 ウェッソン:………………………………。 テムズ:えーっと、回想するのはいいけどちゃんとカウンターに立っててね。わたしが休憩してくるわ。 テムズ:まったく、白昼夢じゃないかしら。思い出が多いのも困ったもんよね。ああなったらもう30分くらい戻ってこないし……あら。 医師:……ああ、そうだ、頼む。例の件――確定した。ケースBだ。 テムズ:ジェフリーだわ。無線局で何してるんだろう。 医師:構わん、クイーンズ・ヤードが末端に触れるまでには時間がある。その間にフェイズ3――可能ならば「西の島」でフェイズ4にまで到達させる。……そうだな、五日だ。ヤヌスを付けろ。奴は鼻が利く。 テムズ:へ? 医師:私も「稼業」を片付けてから直ぐに向かう。……はっ、心配性も大概にしろ。感づかれるものか。これでも私は街の慈善家で通っているのさククク。 テムズ:は、はい? 医師:計画の成就も目前だ。抜かるなよ。我らの悲願――いや、貴様には言うまでもないことだったな。それでは、閣下によろしく。(ガチャン) テムズ:ジ、ジェフリー……。 医師:(くるり)やあこんにちはテムズ。良い雨だね。 テムズ:え、あ、そっ、そうね。じゃ、わたし用事あるからちょっと小走りで行ってくるわねサヨウナラ(ずざざざざざざっ)。 医師:……………………。 テムズ:あうう、なんかとんでもないことを盗み聞いちゃった気がするけど気のせいよね聞いていないわよね、うん。あれは雨の音だったんだ……。 あら、あれは。 アリス:ああ、馬鹿の振りも疲れるわ。すっかり身に付いたけれど、本当の私はどっちかしら。忘れてないわよね。計画は五年前から動き始めていた。そうよ「アリス」、これは二人の誓い。今は半身半心だけど、これが終われば…… テムズ:え? セリーヌ:ぶつぶつ……、煩い。鋏は何処? 切ってしまえ……切ってしまえ、こんな、ぶつぶつ……。いつだって切られることを望む……なんて煩い世界なの。ぶつぶつ……。 テムズ:ええ? アリスト:もう少し。もう少しだ。もう少しでこの白いギターは黒くなる。ははっ、暗黒軍団の再来は近いぞ。 テムズ:ええぇ? アニキ:時は満ちた。今こそ拙者は祖国の為に帰ろう。我が手に従う無敵艦隊と忠臣があれば大陸の脅威などいかなる物か。 テリー:ははあっ。それがし今まで殿を謀っておりましたッ! テムズ:な? アリサ:ねえテムズ。 テムズ:あ、アリサ! どうしたの、なんかみんな突然変なことをおっぱじめて……。 アリサ:お別れだよ。わたし、もう光満ちる魔法帝国に帰んなきゃいけない。千年に一度の闇軍団が打ち入り会開いてるって報告があったんだ。 テムズ:な、な? アリサ:じゃあね、あんたとの毎日は良くも悪くもわたしの荷物だから(ばっさばっさ)。 ヘレナ:ねえテムズ。 テムズ:ヘレナ! あ、アリサまでなんか帝国に行くとか何とか言い出して飛んでっちゃったんだけど……。 ヘレナ:お別れ。あいつは最後まで気付かなかったか……これが最良の結末だったかもね。あたしも闇軍団の連中を引っ張りに行ってくるわ。今の連中にはつまみが足りない。 テムズ:なーーー!? ヘレナ:しかたがない、これも「四年前」の罰よ。あんただけには言い残したかった……さよならテムズ、下宿先にウサギがいるから世話してやってね(ずむむむむむ)。 テムズ:へ、ヘレナー! じいさん:祈りは無力なのか。いいや、そうではない。儂が見てきた下界は軟弱な代物ではなかったぞ。人よ、今こそ己の魂を赤く輝かせるのじゃ。さすれば神の結界は解け去るじゃろう。行くがいい、時代は常に汝らと共に紡がれる。 テムズ:うう…………。 レドウェイト:ふっ、分かっているさ爺さん、世界はまだまだ英雄を必要としているようだ。 テムズ:わ、わたしはどーしたら……(ふらふら)。 鍛冶屋:テムズさん、わかったんですよ! テムズ:ああ、鍛冶屋さん……。どうしよう、みんながわからなくなって……。 鍛冶屋:しまった、先を越されたか。……テムズさん、僕に足りないものがわかったんですよ! テムズ:え……? 鍛冶屋:ミステリアスさです! 人は誰しも、秘密を抱えてなきゃ始まらないんですよ! 僕はそれに欠けていた。今の今まで、今にしか生きることを知らない若造だったんです! テムズ:み、ミステリアスさ……。 鍛冶屋:そして僕は見つけた、僕自身の謎を。今こそそれを教えるときなんだ、テムズさん。そうすれば僕も一人前だ。そうさ、きっと、僕はテムズさんに―― テムズ:鍛冶屋さんの、謎? 鍛冶屋:そうです。今まで僕は鍋ばかり作ってきていた。でも違う。テムズさん、僕が夜なべして作っていたのはおたまだったんです! テムズ:…………。 鍛冶屋:ありがとう、顔を背けずに聞いてくれた人はテムズさんが初めてだ。これが僕の秘密……。どうですか、ちょっとときめきましたか。 テムズ:………………なんていうか、微笑ましいわね。 サリー:エントランスの更新時期だってミステリィ! この世は謎に満ちていますねぇ。そんなスリルフルな今回の掲載作品は、こちらですぅ。 番外編第24話『Separated rain』 TRPGセッションログ3『狐狩りにうってつけの日』 ウェッソン:……そして俺はすかんぴん。あいつは二度とトトカルチョに命を掛けないと誓ったのさ。これで話はおしまいだ。 サリー:ウェッソンの昔話は面白いけど、ミステリィとしてはやや小粒ですねぇ。 ●つづく。本作品に登場する人物・設定はフィクションです。 |