エントランスとは、えーと……。まあ、なんだ。見たものだけが真実なので、それを踏まえて判断していただきたいと思うのです、エントランスがいかなるコーナーなのか。 ……Go home》
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Entrance:39 一巡して他力本願


フロンティア・パブ、5月のある午後
Contributor : ねずみのママさん



「今日、街であの人に会いましたよ……なんだかものすごくひさしぶりだったんで、顔を忘れちゃったくらいですぅ」
「誰に会ったって?」
「ほらぁ、あの人ですよぉ……ええと」
「名前まで忘れちゃったんじゃないでしょうね」
「えっと……あの人ですよあの人。私の顔じーっと見つめて、『どこが似てるんだろう』 とか言って、そのまますーっと行っちゃったんですよぉ」
「ああ、だいたいわかった。そいつなら俺も今日会ったよ。歩きながらなにか考え事してたな。よぉ、しばらく、と声をかけたら、『本当は左利きなのかそれとも右利きなのか、どっちだ』っていきなり聞かれた」
「で、どう答えたの?」
「『まあ、一応両方使えることになってるが、どっちかというと左が多いかな』と。なるほど、とかなんとか口の中でぶつぶつ言いながら、行っちまったよ」
「ふーん。私はね、『プライベートで着る服は、何色がいい?』なあんて、聞かれたわよ。ちょっと期待しちゃおうかな」
「あー、テムズさんいいなー。ひとりだけ、ずるいですぅ。贔屓ですぅ」
「まあまあ、どうでもいいじゃないか、サリー。ただ聞いただけなのかもしれないし」
「私も新しい服、欲しいですぅ……」
「それじゃあとで上に行って、頼んできたら?」
「えぇ? いるんですかぁ?」
「泊まってるのか? 珍しいな」
「一晩だけ、ね。最近とっても忙しいらしくて、なんとかいう木の実のグループやら、ニンジャの放送局とかのほかに、頼まれ仕事も多くなってきたみたいだから、前みたいにずるずる居座ることはなさそうね」
「大変だな」
「少しは見習って、まじめに働けば?ウェッソン」
「俺はいつだってまじめさ」
「冗談にしか聞こえないわね。さてと、そろそろ開店準備をしなきゃ。ひさしぶりにフィッシュアンドチップスをつくろうかな」
「わぁ、ほんとですか?嬉しいですぅ」
「あと、小さいケーキを焼いたから、飾り付け手伝ってくれる? サリー」
「はぁい」
「やけに張り切ってるな、たまに客が泊まるからか」
「今日、誕生日なんだって。私たちもお祝いしてあげましょうよ」
「それじゃ私はプレゼントをあげますぅ。このあいだおじいさんからもらった――」
「あ、あれはやめとけ、サリー。これ以上犠牲者を出すな」
「えー、どうして? とってもナイスなプレゼントなのに」
「ああ、それじゃあとで庭の花でも切って持っていってあげたら? とにかく仕事しましょ。もうじきお客さんが飲みに来るわよ」
「はーい……」


おしまい

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