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Entrance:28納涼エントランス




暑中見舞い

「暑いですぅ〜」
 フロンティア・パブの中、サリーが暑さにへばっていました。夏の暑さの中、いつもの恰好なのですから当然です。しかも、テムズが衣替えを薦めた時も「これが、探偵としてのスタイルですぅ」などと言って着替えなかったのですから自業自得です。
「サリー、店の中でへばってたら邪魔になるでしょ?」
「暑いものは暑いんですぅ〜」
 窓のあたりでごそごそやっているテムズがサリーに言いますが、サリーは相変わらずへばったままです。
 ――チリーン。そんな音といっしょに、一筋の風が店の中を通りました。
「どう? 風鈴。涼しくならない?」
「……やっぱり、暑いですぅ〜」
「もう、仕方ないわね。とっておきを出してあげるわ」
 テムズはそう言って奥に引っ込みました。そして、戻ってきたときに手に持っていたものは、取っ手のついた器械――
「か、カキ氷ですぅ!!」
「ブレイムスさんが器械を作ってくれたのよ。あと、製氷機も」
「さ、さっそく作ってくださぃ」
「……実はね、サリー」
「はい?」
「……氷、できてないの」
「はい?」
「氷の大きさの関係で、夕方頃にならないと氷が出来そうにないの」
「えぇぇぇぇぇ!?」
 テムズの衝撃の告白に、サリーはテーブルに突っ伏しました。
「それならどうして出してきたんですかぁ」
「……少しは涼しくなるかな〜と」
「絶望の余り、暑さが増しましたぁ」
 頭を掻きながらごまかし笑いをしていたテムズでしたが、サリーの様子に、「やれやれ」といった風に溜息を一つつきました。
「はいはい。それじゃあ、今度こそ本当にとっておきを出してあげるから」
 テムズは苦笑しながら奥へと引っ込みます。
 チリーン。
「暑いですぅ」
 チリーン。
「遅いですぅ」
 チリーン。
「暑いですぅ」
 チリーン。
「お待たせ、サリー」
 テムズの言葉に、サリーが顔を上げると、目にも鮮やかな赤が飛び込んできました。スイカです。しかも半月切り。
「ひゃっほぅ! わかってるじゃねぇか姉ちゃん! ですぅ!」
「その前に!」
 そう言いながら跳びつこうとするサリーを、テムズはぴしゃりと片手で止めました。
「ほへ?」
「その1『その言葉使いの素を読むのは止めること』。その2『夏服に着替えること』。以上を守るなら食べてよろしい」
「くっ、探偵としての――」
「嫌なら仕方ないわね」
「おっけぇ大賛成ですぅ」
 親指を立ててみせるサリーに、テムズは苦笑を浮かべます。
「それじゃあ、食べてよろしい。あ、多めに切ったから、食べ過ぎないようにするのよ?」
 シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク。
 すでに食べ始めたサリーには、テムズの言葉は届きません。テムズは、やっぱり苦笑しながら夕食時の準備をするために奥へと入っていきました。
 シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク。


「おっ、カキ氷か」
 夕食時のお客もいなくなり、一息ついたところに出されたカキ氷にウェッソンは微笑みました。
「ええ。ブレイムスさんが器械を作ってくれたの」
「何を作っているのかと思っていたが、それだったようだな。器用なものだ」
 そう言ってカキ氷を食べ始めるウェッソンとテムズの横では、もちろんサリーがお腹を抱えて唸っていました。
 スイカの食べすぎには気をつけましょう。


〜おしまい〜


▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲




アリス:ふっふっふ。成功です、先生(にやり)
医師:ああ。『円卓』チャットログから盗んできたようなものだが、まあ構わないだろう。確信犯返しと言ったところかもしれん。
アリス:組織の目もくらくらっと眩ませ完了です。しばらくはここに転載しててもばれません。ましてや無断で、なんて――ひゃっ!? な、なに!? 突然闇から毛糸玉が!
セリーヌ:あなた、何もやっていないように見えたけれど?
アリス:やってないなぁんて事はないわよ。私が後から謝ればきれいに収まるでしょう?
医師:それは任せる。だが、問題は後二つ残っているな……。
アリス:あ、わかります先生。「一体上の超短編は誰の発言から盗んできたのか」――ひぃぃっ! や、闇からコンニャクが!?
セリーヌ:それは高野豆腐
アリス:あー、どおりで、タッチがすかすかだと思った。煮汁が染み込んでて、おいしい……。
セリーヌ:「いつまで転載するか」「非投稿作品をバックナンバーに残すか」の二点、です。暑中見舞いの定義は夏の土用――立秋(8/8)前の18日間に送る物、となっているはず。8日にしまうべきでは?
医師:異議はないよ。では、そうするか。バックナンバーとして残すかどうかは、作者の尊厳を一番に守る方向で行く。本人からコンタクトがなければ、今回のvol.28は新しい無印に差し替えられるだろうな。
アリス:ええと……それは、差し替えの時私たちの無印も消えるってことでしょうか?
医師:…当然だ。
セリーヌ:‥選択の余地も無いわ。
アリス:いいのかなあ。それじゃ、最後に、この暑中お見舞いを書いてくれた人にお礼を言わなくちゃですね。どうもありがとうございました! 影の管理人・えいめー――きゃー!? な、なぜに、闇からボラの大群が!?
医師:冗談でなくなる一線がどこかにありそうだからな。足元は見ておくように。
アリス:ふぁい……。ああでも、ボラって蒲焼きにしたらおいしそう……。


セリーヌ:今回は四編の小説が掲載されます。


本編第41話『The little red horned girl』
本編第42話『Summer bucket』
超短編第8話『Random encounter[1]』
超短編第9話『SIX』

 先生の読みが当たった、と言う所かしら。超短編に新しい構造が見え始めています。それと匿名投稿者が出現しましたから、その投稿者に関する憶測・ツッコミは最小限に控えるべきでしょう。
 それでは、失礼し――

ヘォートル:ふふふ、ふはははっはは。来たぞ、来たぞ。幾年の時を経て、私は再びやって来たぁ! 刮目せよ、その目に飛び込む魅惑のメニューに君は耐えられるか……(ちゃぷん)

セリーヌ:……あのテムズ川も、随分排水に汚れてしまったものね。



●とにかく、つづく。


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