もう森しかない。 夕刻を迎えた、嵐の空は黒く塗りつぶされている。 木々の天蓋に雨が受け止められても、それはより大きな水滴となって ばたばたと全身を濡らしていく。 「――…………っ」 息などとうに尽きて 足がもつれて、転んでしまう。 角の取れない砂利が体重分の力であちこちをえぐり取った。 全身の熱が三秒で、掌と肘と膝とあご先に分かれて、律儀に激痛へと変わってゆく。 立てない。 もう一歩だって動けない。 ――駄目だ。 もう駄目だ。 進んだって駄目だ。 この先に、リンクページなんてありはしない。 どのみち前には、暗い森しか続いていない……。 暴れる呼気を押さえつけながら、 ここで初めて、後ろを振り返って 「……あ……!!」 ありえないものに声を絞り出された。 転倒したのは、足がもつれたからではなかった。 死体に蹴躓いていたのだ。 でも、その死体は、ありえない顔をしていて…… 「そんな!」 声が、 「違う、そんな!」 聞こえて間断なく声が、 「あなたが死んでるはずない――」 聞こえるたびに脳から酸素が失われていったので、 わたしは息を吸う。 ………… |