「――――――うぁぁぁッ!!!」
今度こそ。
口からほとばしったのは今度こそ悲鳴だっただろう。
振り返らず駆けだした背中を
ぞっとする音を立てながら、何か硬い感触が擦過する。
それを確認する間もない。
背後から水音。
浴室の敷居につまずきそうになる足下を必死で堪えて

びたり、

迷いなく詰めてくるその足音から一歩でも離れるため
全速でぶつかるように脱衣所の扉に飛びつく。
勢いのままドアが弾き開けられて、
「がっ!」
対面の砂壁と肩とがしたたかに激突する。

びたり、

起きろ。

びたり、

――振り向くな。

びたり、

離れの玄関が真っ黒い摩りガラスをこちらに向けている。

びたり――


外に逃げる