「…………」
予想していたからか、
ぞっとするほど平静に
君はそれを見ることができた。
少女であろうものがふたつ、ぐったりと浸かっている。
長い黒髪の眼鏡の少女はもう一人へと
もたれかかるようにひしいでいて
「……眼鏡を外さなかったなんて」
ブロンドのテールを頭の両脇にぶら下げた少女は
嫌そうに中空へと上半身を投げ出している。
「……髪をほどかないなんて」
浴槽の中にいる人間が裸なのは言うまでもないだろうが、
どのみち、この二人は死んでいる。
生きていた頃は年相応に血色も良かったであろう
彼女たちの顔は、今は絶望的に緑色をしている。

……君はここで初めて、目を背けた。

まともじゃない。
平静になるんじゃなかった。
まともな頭でこんなものを見てはいけない。
しかし
みしり、と、脳がきしみを立てながら
眼球にこびりついた光景は
ささやかな狂気すら伴って君に反復を促す。

「ああ」

そう。
この子たちは……

「あああ」

狭くはない浴槽。
波紋も立たない不透明な水面。
そこに浮かぶ肩ですら、半分しか見えない。

「ああ……あ……!」

見るな。
緑色。

見返すな!
君は、


見る