顔が無くなっていると思ったら、 白菜が一葉顔にかぶせられているだけだった。 「……無残な」 凶器はそばに転がっていた。一抱えもあろうかという巨大な白菜が 玄関ホールの片隅にうち捨てられている。 白菜には一目で分かる巨大なへこみが残っていて、 それが彼女の頭を直撃したであろう事は想像に難くない。 ……寒い。 惨劇の余韻がここには残っていた。 ひっそりという音すらないホールには 薄灰色をした窓の光がぽつり、ぽつりと差し込み 輪郭も鈍く反射しているだけだ。 そこに、白菜の葉がまばらに散らばっている。 これこそが余韻だ。 背中をふるわせるには十分だ。 「……寒い」 続きが出るかどうかも分からない漫画の主人公。 彼女の境遇に同情することなど、 許されるはずもないが。 最近出た新しい漫画は 彼女の同級生が主人公だと聞く。 可能性があった。 この魔法少女には僅かな可能性があったのに。 たったの、白菜の一振りで、頭蓋ごと潰えた。 もう、死体しかない。 「ああ……」 どんな立場でも、生者はうめくしかないのだ。 ゾンビのような呻きというのは、実のところ、生きて動く声帯が軋む声でしかない。 「…………」 ――君は、 移動する |