正面玄関の扉を開け放ち、踏み出し、後ろ手に閉める。 「はあっ」 そこまでを一息にしてのけて―― 「はあ、はあ、はあ」 ………… 「はあ、はあ、はあ」 それ以外の音は聞こえず…… 「はあ……はあ、はあ……」 もうねずみ色の光しか照らすものはなく…… 「……はあっ…………はぁ…………」 ……君は、スカートを両腕と床板の間から 解放する余裕をようやく取り戻す。 さあ、立ち上がって、辺りを見回すんだ。 このサイトの壁紙は年月に晒されたかのように色褪せ、ひび割れ、 埃塗れのカーペットに白い斑のテクスチャを描いていた。 黴と埃と、水気の匂いを感じる。 ここに在りし日の辺境紳士社交場の面影は、どこにもない。 見回す |