The another adventure of FRONTIERPUB 12

Contributor/哲学さん
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 銃声が……止んだ。
 残ったのは……少女と老人のみ。
 少女は倒れたテーブルの陰に隠れてその手にもつ銃を構えていた。
 そして流れるのは……余りにも厳しい沈黙。
 はぁ……はぁ……はぁ……
 しばしの静寂はやがて少女の荒い呼吸によって一層その静けさを増す。
「……」
 少女――テムズはゆっくりと呼吸を整える。無論、注意は背後に向けたままだ。
――私は……どうすればいい?――
 呼吸を何とか沈めながら手元の銃を見る。
 これは自分の銃ではない。さっき敵から奪い取ったモノだ。
 だが、この距離で相手に当てる自信もない。残弾も少ない――。
 彼女は何か他に武器になるようなモノを探し手回りを見る。
 そこにはナイフとフォークが落ちている。彼女はそれを取ろうと手を伸ばし――。
「……!!」
――持ち上げられなかった。何度も何度も手を伸ばすが持ち上げられない。彼女は恐る恐る手を顔の前に戻していく。
「…………」
 手は震えていた。どうしようもなく震えていた。
――当たり前じゃない! 恐いにきまってるわよ!!――
 彼女はしばらくその手を見つめ――床に叩き付けた。
パァァン
 軽快な音が辺りに響く。そして痛みを感じる間もなくその手で銃を握りしめた。
――どうすればいい? ウェッソン――
 取り敢えず身近な戦闘経験者を思い浮かべる。彼ならばどうするだろうか? あの男ならばこの場面を切り抜けてくれるのだろうか? 自分がここで泣き叫んだりしたら助けに来てくれるのだろうか?
――もし、ここであいつの人質になって彼の助けを待つ方が賢明だとしたら……そしてこれからも彼が助けてくれると言うのなら……私は――
「……」
 私は銃を再び強く握る。
――関係ない、私は――
「まだ諦めるには早い。だって――私は強いもの」

Lesson 2 Anything is My Weapon


「あら? もう終わったの?」
 がらんとした酒場のカウンターの片隅で……ウェッソンは分解していた銃を組み立て終わっていた。
「ああ、つきあいが長いからな」
 こうして彼が簡易整備をするのはいつものことだ。もう目を瞑っていても出来る自信が彼にはあった。もっとも、そんなことは絶対にしないが。
「どーせまた何日かしたらあの鍛冶屋に整備して貰うんでしょ?」
 呆れたようにテムズが言う。
「ああ……だけどこいつには魂が籠もってるからな」
「何それ? 持ち主が次々と死んでいるとか?」
 胡散臭そうな目で彼女は見つめる。
「そんな抽象的なもんじゃないさ……もっと単純なことさ」
 彼は銃をホルスターにしまい……即座に構えた。その先には綺麗に磨かれたグラスがおいてある。
「これは俺が何年も使っている。だからグリップとかも擦れて俺の手の形に馴染んでるし、逆に俺以外の人間の手には新品より使いにくくなっている」
 彼は懐から銀貨を取り出し放り投げた。
チィィン……
 僅かな音と共にコインは上昇し……ゆっくりと落ちる。
カンッ
 が、ウェッソンの目線より下がる前にウェブリーの銃口に触れそれと同時にリボルバーが回転し、引き金が引かれる。
カチッ
 そしてまたその勢いでコインはまた上に上がる。そしてまた落ちるところに銃口が行き、引き金が引かれる。
カンッ カチッ
カンッ カチッ
カンッ カチッ
カンッ カチッ
カンッ カチッ
 6回繰り返したところで彼は銃をしまい、宙に舞うコインを取ろうとした時……横合いから伸びたテムズの手がコインをかすめ取った。
「……で?」
 それがどうしたのよ? と彼女の目は訴えていた。
「……この銃が俺に使いやすくなっているのと同じように俺もこの銃の扱いが上手くなっているのさ。二つの距離は他の物よりも近い……魂が籠もっているのさ」
「へぇ……」
 彼女はそう言って銀貨を懐にしまう。
「この銀貨は宿代の延滞金の足しにするわ……」
「……やれやれ、君には敵わないよ」
 そう言って彼は立ち上がる。そう、今まで彼は座ったままさっきのワザをやってのけたのだ。
「で、あんたは何してんのよ?」
「え? ……この虫眼鏡には私の魂がこもっているんですぅ」
 そう言いながら金髪の少女――サリーはそう言いながら虫眼鏡を磨いていた。
「――あっそう」
ガタンッ
「きゃぁぁぁぁぁあ」
 彼女がサリーの座っていた椅子を蹴り飛ばしたせいでサリーは床に腰を打ち付ける。
「ナニするんですか!?」
 彼女は腰をさすりながら立ち上がる。
「な・に・を……てっ?」
 凄まじい迫力でテムズは睨み付ける。
「ひぃっ! 恐いですぅ」
 蛇に睨まれたカエルのようにサリーは動けなくなる。
「今日が何の日か知ってる?」
「ええぇぇ……と」
 サリーは眼鏡をずらし、あらぬ方向へと目を向けながら考える。
「もしかして……月に一度の名探偵記念日ですか?」
「んなわけないでしょ! 何よそれ?! 今日は月に一度の宿代払う日よ!!」
がしっっ
 逃げようとしていたウェッソンの首根っこを掴み強引に引っ張る。そのおかげでウェッソンとサリーが横に並ぶ。
で……今月はどうなのよ?
 テムズの言葉に二人は顔を合わせて……そして二人同時にテムズに向き直り笑って……頭を下げた。
ごめんなさい(はぁと)
「じゃぁぁぁかしいわぁぁぁ!! 稼いでこぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!」
ぽぽ〜〜い
 如何なる腕力のなせる業か片手でサリーとウェッソンは店の外へ投げ飛ばされてしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 そう言って彼女はカウンターに立てかけて置いたモップを手にする。
「全く……甲斐性なしねぇ……」
 後に残るのはがらんとした酒場と……彼女と……。



ギィィィ
 扉がゆっくりと開く。
「いらっしゃいませぇ」
 そう言ってテムズは精一杯の笑顔振りまいて戸口に顔を向ける。そこにいるのは一人の年老いたガンマン。
「ヤツは……ブラウニングは居るか?」
 喉を振るわせ低い声を髭の奥からガンマンは発した。
「ああウェッソンのこと? 彼ならさっき出かけたけど?」
「ほう……そうか」
ドゥゥン
 瞬間……気付けばテムズは飛び退いていた。そして一拍送れて弾丸が彼女の横を通り過ぎる。
「……なによいきなり!!?」
ドゥゥン、ドゥゥン
 言葉の変わりに2発の銃弾が返ってくる……が、それもテムズのモップの一振りで弾かれる。
「ほう……あやつの養女はど素人と聞いていたが……なかなか」
「養女……? もしかしてサリーのこと? 私はただの酒場主よ」
 モップを構えながら彼女は言う。濡れたモップを銃弾で貫通させるのは難しいことだ。タイミングを合わせれば弾丸を落とすことは不可能ではない。――が、それを実行することはどんな熟練のモップ使いといえど不可能に近い。
「そう、彼女は最高のモップ使いだ! 彼女の振るうマジカル☆モップは天地を揺るがす。だが、彼女が真の力を発して魔法少女となったとき! そのステッキが放つ――」
ドゥゥン
「アウ――」
 いつの間にか現れて熱弁を振るっていた黒いタキシード姿のウサギは老ガンマンによってその額を打ち抜かれ倒れる。
「……なんだこれは?」
 老ガンマンは顔をしかめながらそのウサギの死体を見る。
ガバァァァァァ
「なんだかんだと聞かれたら!!」
 瞬間垂直にウサギは立ち上がりシルクハットを片手で回転させながら片手の人差し指をびししぃっと老ガンマンに向ける。
「応えてあげるが世の情け!! 私はフォートル! それ以上でもそれ以下でもない!! ……最も謎の多いかっこいいウサギさんだけどね……ふふふ」
「……」
ドゥゥンドゥゥン
 老ガンマンは考えるのもやめて銃を撃つが妖しいウサギ――フォートルはひょいひょいっと避ける。
「はははまた会おう〜〜アディオース」
ドロンッ
 どこからとも無く出したステッキを回転させた途端、フォートルの周りで爆発が起こり、次の瞬間には居なくなっていた。
「――なんだアレは?」
 老ガンマンは判断に困りテムズに聞く。
「あたしに聞かれても困るわよ――あんたも用がないならどっか行ってよ」
「ふ――ブラウニングと戦おうと思っていたが……面白い。楽しませて貰うぞ」
「だぁぁぁもしかして危ない戦闘マニア?!」
 言うが早いか老ガンマンは銃を放つ……が、テムズはテーブルを盾にして場所を移動する。
 それと共に老ガンマンもそれを追いかけ場所を変えていく。
「……キリがない!」
 意を決してテムズは盾にしていたテーブルから飛び出て老ガンマンにモップを……。
「ちょっと待ったぁぁ」
 入り口に新たな人影が現れる。瞬間老ガンマンは新しい銃を取り出し、彼に向け、テムズも懐から隠し持っていたデリンジャーを取り出し、入り口に向け、入り口の男も二丁の拳銃を取り出してテムズと老ガンマンに向ける。
 入り口の男にはテムズのデリンジャーと老ガンマンの自動拳銃が――、テムズには老ガンマンの自動拳銃と入り口の男のコルトパイソンが――、そして老ガンマンにはコルトパイソンとテムズのモップが突き付けられている。
――誰も動かない。動けない。
 全ては僅かな均衡で保たれていた。
――「護身用だ。なぁに、弾を入れる必要もない。酔っぱらい客相手に威嚇くらいにはなる」――
 テムズの脳裏にデリンジャーを渡してくれた男の言葉が思い浮かぶ。彼にしてみればこうなる事態を予測していなかっただろうが――少なくとも彼女は感謝した。――もう居ない祖父に。
「取り込み中悪いが聞きたいことがある」
「失せろ若造。老いぼれの楽しみを邪魔するんじゃない」
「変なシュミはやめて欲しいわ」
 思わずテムズはモップを持つ手に力を込める。――到底意味はないが。
「サリサタ様は何処にいる?」
「……サリーのこと?」
 テムズは目だけ男に向ける。入り口から出てきた男はこの辺りでは余り見かけない人種だった。
――チャイニーズ? それともジャパニーズかしら?――
 大戦の後でボロ儲けしたジャパニーズのSuzukiSyoutenが最近この界隈で幅を利かせているが、テムズにはジャパニーズとチャイニーズの区別が付かない。
――そう言えばサリーの国はどこだっけ?――
 彼女に一度質問したことをテムズは思い出す。
――『探偵に国境はないですぅ』――
 脳裏でにゃははと猫のように笑う金髪の少女の顔を思い浮かべ――テムズは考えるのをやめた。
「いきなり銃を突き付ける男とつき合いのある娘(こ)には見えなかったけど……取り敢えずそんな人には教えたくないわね」
「こっちは急ぎの用なんだ。イヤでも言って貰う」
「力づくでも?」
「ああ……力づくでも、だ」
「けど、まずはワシの用件の方が先じゃ」
 老ガンマンは会話に割り込み、鋭い眼光を男に向ける。
「邪魔立てすると容赦せんぞ?」
「それはこちらもだ」
 男と老ガンマンは激しく目線をぶつけ合う。
 テムズは内心、この隙に逃げようと思ったが……動けなかった。相手の発する殺気に気圧されて動くに動けない。
「……いつまでこの状態を続けるつもり?」
 テムズが辛うじて絞り出せたのはこの言葉だけだった。
「12時になると同時に全員武器を落とす。その後は好き勝手にすればいい」
「何よそれ?」
「そんな危険な賭けに応じるとでも思っているのか?」
 口々に文句を言う若者達に老人は鼻で笑う。
「度胸無しが……戦いはこうでなくてはならん。男じゃないな」
「いいだろう……一族の名に賭けて戦ってやる」
 ……アジア人はいつもこれだ。テムズはそう思い、溜息をつこうとした。が、さすがにそんな隙は見せられない。
「……あたしは女だし」
 一瞬……ほんの一瞬だけど言いようのない沈黙が流れる。
「ふん……お前に勇気が無かったとしても……最後に勝つのはワシじゃ」
 そう言って再び沈黙が流れる。
「……分かったわよ……やってやろうじゃないの」
 テムズはそう言って時計を見る。
チッコチッコチッコ……
 テムズは急に時計の音が大きく感じられた。あの時計は祖父のお気に入りだった。父は余り気に入っては居なかったようだが、借金のカタに売ろうとしなかったので実は気に入っていたのかもしれない。
 何はともあれ……樫の木でしっかりと作られたそれはとても頑丈で……もう何年も正確に時を刻んでいる。と、言っても旧式なので時々ネジを廻してやらないとダメだが。
 時計の音がなるたびに、場の緊張も増していく。アジア人の男の我慢の限界が近づいた頃……それは来た。
カチッ……
「パッポー」
 時計の扉が開かれ鳩が鳴く。それと共に全てが動き出した。各々の銃とモップが重力によって木の板に引きよせられる……。
 が、そんなことは彼女には関係なかった。残りの二人が地面に落ちようとする銃へ向かう中、ただ一人大きく脚を後にあげていた。
「てぇぇやぁぁ」
 彼女の脚は地面に落ちる寸前のモップを蹴り飛ばしていた。モップは凄まじい回転と共に老ガンマンへと向かう。その隙にテムズはアジア人の方へ走っていた。デリンジャーには目もくれない。見事モップは手にくくりつけられていた紐で銃を取る最中の老ガンマンの頭部へ激突する。
 一方、老人は頭部を回転するモップに後方へ吹き飛ばされながらも――移動したテムズに目もくれず――その場でしゃがんで銃を掴んでいるアジア人の右手首に4発の銃弾を撃ち込んだ。アジア人は痛みに顔をしかめながら右手の銃を手放し――むしろ握力が無くなって自然と落ちたのだろうが――残った方の銃で老人の脚を数カ所撃ち抜き、走ってくるテムズに銃を向ける。
 が、既にそれは遅かった。テムズの蹴りによって暴走馬車と化したテーブルは地面を走り男の体に激突する。そして別のテーブルを倒してテムズはしゃがみ込み、男の捨てた銃を拾う。それと同時に数発の弾丸がテーブルに叩き付けられる。方向からして老人の弾だ。
 意を決してテムズは上半身だけ乗り出して数発打つが素人のためか老人にはかすりもしない。彼女はすぐさましゃがみ込む。
ドゥゥンドゥゥンドゥゥン
 一拍遅れて、再び銃弾が彼女の頭上を通り過ぎた。老人は壁に背をついて荒い息を吐きながらじっとこちらを見ていた。右足から赤い液体がどろどろと流れていることからもう歩けないのだろう。だが、それでも物陰に隠れないのはこちらより早く決定打を撃てるという自信の現れだろうか。
 ちらりと見てみるとアジア人はテーブル攻撃のおかげか気絶していた。
「……どうすれば……」
 テムズは泣きたくなった。何でこんなところで撃ち合いをやっているかまるで分からない。
「へーいマジカル☆ガール私の助けが必――ぶべしっ!」
 次の瞬間隣に煙と共に現われたウサギは出現と同時にテムズの鉄拳をくらい吹っ飛ぶ。放物線を描いて地面に激突する瞬間――彼は再び煙りと共にどこかへ消えた。
「……なにあれ?」
ドゥゥン
 一発の銃弾が再び彼女を現実に戻す。
――どうすればいい?……ウェッソン?――
 彼女は祈る思いでここには居ない――だけど、彼女の知る最高の銃使いの名を呼んだ。



「チェックメイト」
「っくそっ!」
 おじいさんの言葉にウェッソンは毒づく。
「ほっほっほっ……まだ若いモンにはまけんよ」
 サリーが仕事を探しにまず来たのはいつも奢ってくれるおじいさんのところだった。
 そして何故か彼は意気投合し、チェスで戦っていたのだ。
 ウェッソンは心を静めるためにパイプに再び火をつける。
「爺さん……もう一回だ」
「ほっほっほっ……良かろう」
 今此処で熱き戦いが再び繰り広げられようとしていた。
――どうすればいい? ウェッソン?――
「……?」
 その時……ウェッソンは誰かの声が聞こえた気がした。
「ほい、チェック」
「げっ」
 しかし、彼は再び目の前の大事な戦いに目を向けた。



 床に打ち付けた手がひりひりする。だが、覚悟は決まった。今この手にある銃には魂がない。
――けど……この家には私の魂が籠もっている!――
 テムズは閉じていた目を開き、一気にテーブルを蹴る。少なくとも脚力には自信がある。それと共にテーブルクロスを上に投げ、彼女は右へ飛ぶ。
 テーブルクロスが銃弾によって穴が空いている間に彼女は左手に持っていたナイフとフォークを投げた。それは老人の負傷していない脚に向かう。が、老人は避けることもせずそれを甘んじて受け、体勢を崩すことなく新たな鉛の死神をこちらへ供給する。が、それも新たに投擲されたジッポによってあらぬ方向へと向かう。
「この距離なら私でも当てられるわよ!」
 そう言って老人に銃を向ける。相手との距離はもう3フィートもない。
「来るがいい!」
 すぐさま老人はジッポによって強打した手の痛みを堪え、ずれた銃口をテムズの心臓へ向ける。が、その顔面にテムズの蹴り上げた椅子が叩き付けられる。
「なっ!?」
 老人は堪らずのけぞる。そして地面に落ちる前にテムズの後回し蹴りが老人を捕らえる。
「ぐはっ――意外に可愛いシュミ……」
 吹っ飛ばされながら僅かに老人は言う。
「……全く男はぁぁ!!」
 倒れた老人のこめかみへ銃のグリップを叩き付ける。そして老人は完全に気絶した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 そして……後に残ったのはぐちゃぐちゃに散らかされた酒場と……気絶した馬鹿な男達……そしてテムズだけだった。
「ふーむさすがマジカル☆ガール! 見事にファンタスティックな勝利!」
 どこからとも無く拍手が聞こえてくる。その声の主は……もう考えるまでもなかった。
「……」
「どうだっ……むぎゅっ」
 無言で首根っこを掴まれてタキシードのウサギ――フォートルは黙り込む。
「さっきから出たり消えたりなんなのよ? 大体何で私がこういう目にあってるのよ?」
 殺意を込めてテムズは言う。
「うぎぎぎぐごごまじぎぐげげ(首を絞めてたらはなせないよ、マジカル☆ガール)」
 テムズは手を離して逃げられないように耳を掴む。
「……で?」
 既に彼女はこの騒ぎの原因はこいつだと決めつけていた。そしてその推測は正しいことになる。
「ふ……実はもう一度スカウトしようと思って……取り敢えず肉体能力を測るためにテストをかねて因果律と運命線をいじったのさ!」
ぎゅぅぅ
 耳を持つ手が強くなる。
「よく分からないけどあんたのせいなのね」
「まあまあ、とっても君は優秀だったよマジカル☆ガール!」
 ウサギは懐から紙を差し出す。そこにはテムズの名前と、何らかの評価が書いてあった。目に付いたのは……。
「脚力S」
「腕力C」
「敏捷性S」
「器用度C+」
「魅力B+」
「小計:暴力度SS」
「小計:魔法度E−−」
 だった。
「なによ? 魅力の微妙な低さは? それに暴力度SSって」
「ぶぎぎぎぃぃぃ(そっちに怒るんだ)」
「何でもいいから魔法とかでさっさと店内を修理して!そしてとっとと魔法の国にでも帰りなさいっ!!」
「えーでもー近年まれにみるタイプだから魔法の国の女王様も君のこと気に入ってるのにぃぃ……ぶぎぎぎぎぎ」
「い・い・から早くしなさ・い!!」
「はいはいはい〜〜」
「はいは一回まで!!」
「イエス! マァム!」
 そんなこんなで理不尽な方法で酒場は元の状態にもどっていく……。
「それにしてもこの男達はなんなのかしら?」
 そう言って彼女は男達を見下ろした。

Continue to Lesson3 Lecture of Good Hunting ...or...
















「……待った」
 ウェッソンはパイプをくわえて何度目かのセリフを放った。
「おじぃぃぃさん……若いモンに大人げない〜〜てかぁげんしたったらどうじゃねぇぇぇ」
 ヨボヨボのおばぁさんが横合いから声をかける。
「かっかっかっ! こいつが弱いだけじゃよ」
 そう言っておじいさんは待ちくたびれて寝ているサリーの髪の毛をさすった。

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