濡れた床は、青い衣装に身を包んだ死体を中心に広がっている。
水だ。血ではない。きっと。
樽の影に隠れた腐った芋をうっかり踏んだ時のような、嫌な粘りはない。
隣の、赤い少女の傍らには火鉢があり、焦げた炭がくすぶっている。
直前まで火が付いていたようだ。
こんな陰鬱な地下で、暖を取っていたのだろうか?
もう一つの、緑色をした骸……びしょ濡れで萎んだ猫耳を頭上に戴いた彼女は、
どういうわけか胸元に植木鉢を抱えている。

葉はとうに枯れ尽くしていた。

ここまで来れば、素性は明らかだった。
「なんでこの子達まで」
そうだ。
君はこんな死体は知らない。
「殺されなきゃいけない」

そして凶器は見あたらない。
死体と、それが持ち合わせていたものが
無造作にぶちまけられているだけ。
凶器は見あたらない。

……………………

凶器は見あたらない?

……ないなら?

「どういうこと」
どういうことだ。

誰かが、三人を殺したのだ。


ふと君は耳を澄ます。