人参だ。
人参を詰め込まれれば、人間などひとたまりもないのも当然だ。

待て。

では、さっき、自分が踏んだものはなんだ?

「ひっ……!!」

人参だ!
人参の輪切りが、
革靴の底に半分踏み砕かれて、
じゅくじゅくと人参臭い液体を床にぶちまけている……!
「――ああぁぁッ!!」
小石が蹴立てられて壁に反射する音を遠くに聞きながら
走らなければ。
今走らなければ死ぬ!
走れ!


移動する