Super short 6(Part 1)
テムズの目の前にはゴロツキが3人立っていた。
「へっへっへ。ねーちゃんわしらとあそばんかいのう」
妙に棒読みな口調でゴロツキの一人が言う。その言葉に合わせて他の二人がテムズに手を伸ばしてきた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
テムズが”悲鳴”をあげた。
繰り返そう。テムズが”悲鳴”をあげたのである。
なんと! テムズが”悲鳴”を――
「しつこい!」
テムズの投げた靴が”ナレーター”に直撃した。
「あ、あのぅ、つづけていいんかいのぅ」
例によって棒読みでゴロツキが言った。それに対してテムズが照れ笑いを返す。
「あ、ごめんごめん。それじゃあ、悲鳴からね」
テムズは息をすぅっと吸い込むと――
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
先程にも増す声量で悲鳴をあげた。
「へっへっへ。そんなひめいをあげたってだれもたすけになんぞこんのぅ」
「まてぇいっ!」
ずびどがずどーん!
迫る二人のゴロツキは突然現れた影によって吹っ飛ばされた。一瞬の影は煌めく金髪の――
「王子様!」
「はずれなのだよ、マジカル☆ガール!」
鬘をつけたフォートルだった。マッシュルームにカールした金髪の鬘が爽やかに揺れる。
「な、何であんたが……」
「よくもなかまをやってくれたな。うおりゃぁぁ」
「マジカル☆キーック!!」
「ぐあぁぁぁぁ」
どかぁぁぁぁん!
唖然とするテムズを放って置いて展開する物語。悪鬼の形相となったゴロツキはフォートルに一蹴され、遥かなる放物線を描いた後に爆発する。
「正義は勝つ! いこーる私が正義!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
いつのまにか偶然もとからたまたまそこにあった岩の上で勝ち名乗りをあげるフォートルに、テムズは思わずカカトを落としていた。その威力はフォートルもろとも岩を砕いた。
「さ、さすがだな、マジカル☆ガール! それでこそ私の好敵――イタイイタイ」
「何で、私の夢に出てくるのよ、あんたは」
テムズはフォートルを岩の欠片と足でサンドイッチしながらごろごろと転がして見た。そうすると素直に答えが返ってくると思ったから。
「ああう〜。人の深層意識はマジカル☆ガールにつながっていて、マジカル☆ガールにお仕事だからです〜」
「……へ? お仕事ってこと――」
「いまだ! マジカル☆ゲート、オープン!」
フォートルがパチンと指をならすとポコンと穴があいてパクンと閉じた。当然、テムズはその中だ。
「いざ、行かん! マジカル☆ワールドへ!」
「なんでこーなるのよ〜〜〜」
テムズの目が醒めたのは、いつもの時間だった。
「……あれは、夢……だった、の?」
その答えは、どこにもない。
END