Super short 10
「……………………」
腕組みするパン屋の店主はちょっと得体が知れない。
「素敵なアイデアですね」
音も立てず、ソーサーへカップを添えるように置く婦人。
「ほっほっほ」
好々爺が眺望するように笑い、
「よし、それだ! 今度こそ任せとけって!」
この人はこの人でいつも豪快だ。
「ねぇ、ちょっとあなた。ちょうどうちの甥の子があなたと同じくらいの年頃で…」
お願いだから人の話を聴いて欲しい。
「―――――――――」
気のせいか、さっきから何かの視線を感じる。
タッタタタタタタッ。
うわ、今は勘弁して!
「ちょっと。皆さん、もっと真面目に考えましょうよ!」
味方は彼くらいかなぁ。
「…………まぁ、私もその意見には賛成だ」
とか言いつつ、なぜかここではやたらとリラックスしている。
「マジカル☆ガール! こんなときになんだが君の悪鬼の如き豪腕が必要にな―――……………………………兄弟に他を当ってもらうとしよう」
私にしか聞こえない幻聴はカウンタの下で足蹴にする。
「……ん」
涎を食っていた居眠り宿六が目を覚ました。
「箒をもう十本か二十本くらい付けておけばきっと大丈夫ですよぉ…それより、そろそろお腹が減ってきましたぁ」
テーブルに力なくうつぶせる彼女が発案者。
「いーんじゃない、それで?」
パセリも食べられないくせに。
「一つところに住むって大変よね」
他人事だと思って肩を竦める薄情者。
いつもこうして、
「えーっと…では、本日の議題『にっくきゴミ捨て場に巣くう鳥獣どもはどうしてくれよう』は『今度こそ赤い地球協力の激烈カカシ君32号で威嚇』に賛成多数ということで…議決します。ふぅ」
町内の寄り合いは終る。
「うぉーし、じゃあ酒盛りだ!」
「おぉー!」
「待ってました!」
ここはパブで私は店主だから…間違ってはないんだけどなんだかなぁ。
「…じゃあ、いつものようにカードでも―――」
げしっ。
おしまい
《return to H-L-Entrance