The another adventure of FRONTIERPUB 30(Scene-6 Making)

Contributor/哲学さん
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 カメラの前を二人の男女が仲睦まじく歩く。
 二人は朝の倫敦の街を歩いていく。馬車がそこらかしこを走り、徐々に人が増えていく。
 そして、いつもの通りに一つの宿屋がある。その中へ二人は入っていった。
 そこの看板にはこう書かれていた。

   FRONTIER PUB ・ENTRANCE・

「カァァァット!!!」
 監督の声が響く。
「やったー!」
「ラストシーンが撮り終わったぞー!!」
「後は編集だけだーっ!」
 スタッフ達が騒ぐ。
 そんな中、フロンティア・パブの中でテムズがボヤく。
「やっと終わったのね。あーもー疲れたわ」
 と、そんな彼女をアリストが抱きしめる。
「あ、ちょっとちょっと?」
「やっと二人っきりになれたんだ。ちょっとくらいいいじゃないか?」
 アリストはそう言って片目を瞑った。そうして、二人の唇は近づいていく。
 そう、此処はエントランス・ザ・ムービーの撮影現場である。
 撮影現場では全てのシーンを撮り終え、狂喜乱舞する人でごった返していたが、そんなこととは関係なく、二人の影は重なっていた。



HAPPY LUCKY ENTRANCE
- T H E  M O V I E -

Making of the 「魔弾の射手」
そ の 6


 そして、幾日が過ぎ、ついにクランクアップの時が来た。
「諸君! 喜び給え! 映画が全て完成した!!」
『バンザーイ!』
 スタッフ達が狂喜乱舞する。
「うう、これでやっと故郷に錦を飾れる」
「はーやっと普通の映画作業に戻れる」
 スタッフ達は口々に言う。
「なんか感じわるいですぅ」
 サリーはそう言ってスタッフ達を見る。
「で、試写会は?」
「ああ、これから出演者・スタッフ一同で見るつもりだ」
 その監督の言葉とともにフロンティア・パブに映写機などが取り付けられる。
「さぁて、見てくれ給え」


 上映が終わり、涙するモノ、文句を言うモノ、満足するモノ、反応はそれぞれだったが、まあまあ上出来のようだった。
「うーん、これならある程度の収益は入りそうね」
 テムズはそう言って監督の方へ歩いていく。
「じゃ、これは予定通りタイム・カプセルに入れて埋めてくれ給え」

はい?

 テムズは思わず大声を上げる。
「しまった! 見付かった! ミッチェルくん! 走り給え!」
 茫然とするテムズを尻目にミッチェルくんは走り去る。
「……どういう事?」
 テムズは指をパキパキさせながら言う。
「ふっ……これはこの世紀の映画の結晶としてタイムカプセルに入れて100年後の人間に見て貰うのだよ」
 グラサンをキラリと光らせながら監督は言う。
「……僕のギャラは?」
 アリストが聞く。
「うむ、100年後に石碑が建つ予定だ。収益に応じてデカいモノがたつだろうな」
 監督は自慢げに言う。
「俺達の出演料は?」
 ウェッソンが聞く。
「右に同じ」
 監督の答えは簡潔だった。
「じゃあ、宿で使った諸々の必要経費は?」
 その言葉に監督はやや怯えながらも、自信を持って応えた。
「100年後にツケといてくれたまえ。何、釣りはイラ……」
 だが、監督はその言葉を最後まで言い終わることなく殴り飛ばされていた。
 そして、テムズがモップを掴む。
「テムズ、付き合うわよ」
「全く、これだから髭は嫌いなのよね」
 テムズの両脇に扇子を持ったヘレナと巨大なトンカチを持ったアリサが揃い立つ。
 そして……そこは戦場と化した。


「結局こんなオチか」
 ウェッソンがお茶を啜りながら言う。
「こっちは某無謀編のノリだから仕方ないですぅ」
「そう言えばメイキング5はどうなったんだ?」
「死亡遊戯と同じで幻の名作扱いですぅ。5だけタイムカプセルに入らなかったという設定ですぅ」
「……妙に解説っぽいな」
「メイキングなのでなんでもアリなのですぅ。っていうか幻の欠番には探偵的ロマンが隠されてるとかいないとか……」
 そんな座談会をしている隅で一人、白いうさぎはため息をついた。
――いつになったら巨大化が治るんだろうウサ――
「ウサっ?!」

おしまい



《Side a
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